なぜロードスターは車好きの注目を集めるのか?
2025年最後の投稿になります。30日にこの記事を書いている前後で、大掃除や買い出しなどの雑用に追われてます。まだまだ年内に片付けたいことはあるのですが、なんだかんだで今年はブログの記事を書くことを優先していたことを象徴するような年末休みです。
今年の個人的に一番の話題はなんでしょう?
今年一番大きな買い物は、もちろんマツダ ロードスターを新車で購入したことです。数年前から次の車はロードスターが欲しい!と思っていて、色々とやりくりして現金一括で購入しました。
購入から8ヶ月が経過して、昨日のドライブで走行距離が3484kmとなりました。ロングドライブは5月の千葉遠征で700kmを走っただけで、あとは新潟県内での近距離ドライブになります。うちの周囲では渋滞があまり発生しませんし、バイパスや国道のおかげで短時間の運転でもあっという間に走行距離が伸びます。なので体感的には「あんまり乗ってない」という印象です。
今年の総括として、ロードスターという車について今の自分が思ったことをまとめてみます。
あなたはエンジンを高回転まで回しますか?
以下の記事は2021年に書いたものですが、これまでの車遍歴、都市部で車を所有することの難しさ、車は地方では必需品であること、などを書いています。
自分が所有していた車ですが、一番最初に自分で買った車は三代目レガシィのランカスターというグレードでした。搭載エンジンは2.5L 2500ccの4気筒で、スバル伝統の水平対向エンジンでした。名機EJ20のストロークをアップすることで500ccの追加の排気量を稼いだEJ25は、非常にトルクのある扱いやすいエンジンでした。高速道路での巡航時も非常に静粛性が高く、ほとんどの領域で2500rpm以下のエンジン回転で巡航できたのです。
次に所有したアクセラのディーゼルは4気筒1500ccのディーゼルターボで、これも低回転からトルクがモリモリと出るエンジンでした。これもランカスターと同じようなエンジン回転数までしか使いませんでした。町中で普通に運転していたら、2000rpm以下で十分に事足りるエンジンだったのです。
こういう車ばかりを所有していたので、エンジンを高回転まで引っ張らないのが当たり前の運転になってました。最近の車は燃費と静粛性を再優先しているので、いかにエンジンを回さずに走るか?という方向性になっていて、自分の運転スタイルにはあっています。特にハイブリッド車はトルクフルなモーターのお陰で、エンジンの存在感はほとんどありません。
しかし、世の中にはウチの弟のように「エンジン回転を高回転まで引っ張る運転が当たり前」という人もいます。ホンダのVTECのスポーツカーを所有している人の車に乗せてもらったときも、とにかくエンジン回転を引っ張ってからシフトアップしているのを見て「燃費が悪そうだな」と自分は思ってました。

以前の日本車はショートストロークで高回転型のエンジンを搭載していたのですが、最近は燃費を稼ぐためにロングストロークで低回転からトルクのあるエンジンが主流になっています。エンジン回転を引っ張るのが好きな人からすると「今の車は面白くない」と思うでしょう。
自分は前述した通り、エンジン回転を上げずに運転している人間でした。そんな私が何も考えずに憧れからロードスターのMTを買ったのですが、戸惑ったのはエンジンをそれなりに回さないと道路の流れに乗れないという事実です。特に停止からの加速では、3000から4000rpmまで引っ張って変速しないといけませんし、50km/hから60km/hぐらいの巡航時に、エンジン回転が1500rpm以下に落ち込むとエンジンが苦しそうなのです。
エンジン回転を上げて走ることが当たり前の人からすると理解できないかもしれませんが、自分はとにかく戸惑いました。エンジン回転を上げないといけないから、エンジンもミッションのギアの音も大きいですし、巡航時にエンジンが苦しそうならギアを下げないといけません。これまで乗ってきた車はエンジンのトルクがあったので、かなりの低回転まで高いギアを維持できたのです。
納車から数ヶ月は「憧れからロードスターのMTを買ったけど、自分の運転スタイルと合わなくて失敗だったかも?」と真面目に悩みました。YouTubeの自動車マニアの人がこぞってロードスターを絶賛しているのは、彼らがエンジンを高回転まで引っ張って回して、運転そのものを楽しむタイプの人が多いからでしょう。
同時期に買ったマツダ2も、エンジンはこれまでの車に比較するとトルクが細く、同じミッションを搭載していたアクセラのディーゼルと比べるとATの変速がせわしない感じです。高速道路での加速でも、エンジンが唸りを上げるほどに回さないと速度が出ません。これはロードスターも基本的には同じです。
ロードスター購入前も購入後もYouTubeで動画を見てます
とはいえ、ロードスターを所有していることには喜びを感じています。購入前はYouTube動画で色々なインプレッション動画を見ましたし、購入後もロードスターの動画をアップしている人の動画を見ています。自分はロードスター以外の自動車を扱うレビュー的なチャンネルも見ていますが、それで気がついたことがあります。
とにかく長距離を快適に移動することを優先する車好きと、不便さを許容しつつ運転を楽しむ車好きがいるということです。そして現代の自動車の好みは確実に前者の人が多く、世の中の多くの人が求める車は「運転が楽で快適装備が充実していて、オールマイティーに使える経済的な車」なのです。だから、スポーツカーは絶滅危惧種に追いやられているのです。
前者の車の価値観の代表ともいえるのは、鉄道ヲタクの「がみ」さんです。この人は鉄道だけでなくクルマの移動も多いため、クルマを扱うチャンネルも開設しているのですが、とにかく長距離移動を楽に運転できて経済的なクルマを好んでいます。
このチャンネルの動画は、トヨタのハイブリッド車とか、車内の快適装備などの話ばかりです。最近、がみさんはRAV4のハイブリッドにダイハツのムーブを増車しましたが、出てくる評価軸は「快適で運転が楽」というところが中心です。このチャンネルでは、運転を楽しむタイプの車は全く出てきません。
ロードスターを買った自分がなんでこのチャンネルを観ているのか?というと、自分も車の評価軸はもともと彼らに近いのです。実は購入後に新型カローラクロスのことを知って「ロードスターではなく、カローラクロスのZグレードにしておけばよかった?」と悩みました。先進装備が満載で燃費も良いですし、荷物積めるし、シートベンチレーションもついてトヨタ車だからリセールバリューも抜群です。
それから車を常時20台以上持っている「ワンソクTube」さんも、車を快適移動の道具として考えている人です。この人は1~2年ぐらいで新車を乗り換えるのですが、NDロードスターも2024年の改良でACCが装備になったことで増車されてました。
「ワンソクTube」さんですが、他の車のレビューを見ていると快適装備の要求が非常に高いのですが、ロードスターに関しては何故か採点が甘いです。YouTubeではロードスターのことを貶すと炎上しやすい傾向がありまして、この方のレビューに限らず、ロードスターは多くのレビュー動画で常に絶賛されています。
絶賛される反面、手放す人もチラホラと存在していて、手放す理由を語った動画もそれなりに視聴数が稼げているようです。ロードスターは乗ってみたいんだけど、購入に踏み切れない人も多く、手放す理由を知りたいというニーズがあるのだと思います。
他にも「ロードスターのここが不便」みたいな動画も数多くありまして、中身は分かりきったことしか語ってないのですが、これの視聴数が伸びるのが非常に不思議なんですが、自分もつい見てしまいます。家族の反対、荷物が詰めない、2人しか乗れない、乗り降りが大変など、手放す理由はほとんど一緒です。
ワンソクさんは他の車もたくさん所有しているのですが、そのラインナップの中でロードスターだけが異色の存在です。おそらくは車系動画のレビュワーとして、ロードスターは視聴数が稼げる上にリセールが良いので所有しているのだと思います。本人は明言してないですが、なんか動画から伝わってきちゃうんですよね。
実際、ワンソクさんは1年半で1100kmしかロードスターに乗っていません。彼の所有している車で走行距離が伸びているのは、ソリオバンディットやカローラクロスです。実際、他に実用車を所有していたら、ロードスターの走行距離って伸びないんですよね。
ロードスターは褒めても貶しても手放しても動画の視聴数が伸びる、ということからも、良くも悪くも注目度の高い車だと思います。あと若い女性オーナーの動画がやたらと多いのも、ロードスターの不思議なところです(露骨な視聴数稼ぎの釣りサムネイル画像はどうかと思うけど)。
逆にロードスターが好きで好きで仕方ない、という人の動画は見ていて気持ちいいです。「らいぶドライブ」チャンネルはその筆頭です。不便さもオープンの辛さも、すべてを勢いで片付けています。ロードスターのオーナーとしては、こういう人が割り切れる人、深く考えない人の方が向いてます。
自分のように細かいところが気になる人は、ロードスターには向いてない、とガチで思ってます。
ロードスターに実用性はない!
とはいえ、だんだんロードスターの毒が回ってきました。昨日は新潟には珍しい冬の快晴だったので、かつてのNAロードスターのオーナーだった同級生と3時間ほどオープンでドライブしてきました。

シートヒーターと暖房を効かせていれば、外の気温が冷凍庫のように冷たくてもオープンで走れます。手をフロントウインドウの上に出すと、その空気の冷たさに驚きます。ロードバイクで走りに行くのと同じで、ロードスターで走ること自体が目的であり、単なる移動手段ではないのです。
そんな訳で、ロードバイクとロードスターを趣味として両立させるのが難しい、というのが悩みを抱えています。どちらも趣味の乗り物なので、これらと付き合う時間を捻出するのに苦労しています。

寒い冬の晴れにロードバイクで走りに行くことは、自分にとっては普通のことなのですが、自転車に乗らない人からすると理解しがたいことのようです。それに比べたら冬にロードスターでオープンで走ることは、まだ理解のできる範疇でしょう。真夏の炎天下の方が、オープン走行には全く不向きです。
オープンカーのもっとも良いシーズンは冬と言われますが、新潟の場合には完全に同意はできません。関東のように晴天率が高いところならいざ知らず、新潟では冬場は常に路面が濡れていますし、雨や雪にあたる可能性が高いです。真夏よりは真冬の方がマシである、という表現の方が適切かと思います。
自分しか乗らないと割り切る
自分はロードスターはフルノーマルのまま乗っています。車はカスタマイズすると価値が下がると思ってまして、実用車ばかり乗っていた自分にはノーマルのロードスターでも十分に刺激的です。購入直後はロードスターの購入は失敗だったかも?と葛藤していましたが、最近はセカンドカーとして気軽に非日常体験が得られる乗り物として許容できるようになりました。
しかし、人を乗せる用事には使わないと割り切りました。乗り降りはしにくいし、荷物を置く場所もないので財布や手荷物は常に助手席のシートの上に置いてます。うちにはマツダ2もありますから、人を乗せたり買い物でロードスターを使う必要はないのです。
ロードスターには、車が好きでロードスターに乗ってみたい!という人以外は乗せないことにしました。一人乗車専用と割り切ったので、これまで少し不便だと思っていたドリンクホルダーを最近増設しました。

購入したのは純正のドリンクホルダーに取り付けるタイプで、3Dプリンタで出力されたNDロードスター専用の拡張ホルダーです。

助手席用のドリンクホルダーを助手席脇に移動して、その状態で拡張するように取付するものです。これを取り付けてしまうと、センターコンソールの位置にドリンクホルダーは移動できなくなります。なので、助手席用のドリンクホルダーは常にこの位置に取り付けることになります。

純正のドリンクホルダーよりは径が小さいのですが、500mlのペットボトルなどは普通に置けます。ローソンのカフェのLサイズのドリンクカップだとピッタリすぎて取り出しにくくなるので、大きなカップは純正のドリンクホルダーを使います。
これをつけていても助手席に乗ったときに邪魔と思うことはなかったのですが、あまり親しくない人を乗車させるとなると気を使います。しかし、ロードスターは基本は自分しか乗らない!って割り切りましたので、これでよいのです。
自分が一番苦手な「割り切り」を求められるのがロードスター
自分は全方位でそつなくこなしてくれる八方美人的なものが好きです。しかし、ロードスターはドライバーに割り切りを求めてきます。八方美人的なものが好きというのは、裏返すと大きな欠点があるものが嫌いということなのですが、ロードスターは実用車としては欠点が多く、不便さを許容しなければなりません。
ドライビング姿勢も窮屈ですし、シートの位置の調整幅も少なく、マツダが想定する正しいドライビングポジション以外を取ることが出来ません。私は仕事でPCとスマホを見続けていたせいで首がストレートネックでして、これだと目線が高くなってフロントウインドウの上の枠に視界が遮られます。なので、顎を引いて目線が低くなるように意識して運転することを求められます。
また乗り降りが楽になるように、股関節の可動域が広がるようにストレッチしています。また痩せることで座高も下がって、幌とのクリアランスに余裕が出ました。最初は窮屈なペダルレイアウトだと思ってましたが、運転向きのスニーカーなどの細身の靴を履けば、ペダル配置が気になることはなくなりました。
車高が低くて着座位置も低いため視界は常に悪く、対向車も後ろの車のヘッドライトも常に眩しいです。夕日が眩しくても、小さなサンバイザーは十分に機能しないので、サングラスと帽子は必須です。MTは運転のすべての場面で緊張を求められますし、駐車場ではトラブルが嫌なので離れたところに駐めています。トランクは開口部が小さく、スーパーのカゴがまっすぐ上から下ろすように入りません(少し斜めにするだけで入る)。
この不便さを楽しむ、という割り切りを自分はこれまでの人生で避けてきました。しかし、その例外がロードバイクであり、今年購入したロードスターです。流石にメカトラブルは許容できないので、古い車の味を楽しむみたいな領域には手を出さないと思います。NDロードスターぐらいでちょうどよいのです。
高価な買い物でしたし「いつかはロードスターを所有してみたい」という夢は無事に叶ったのですが、頭では分かっていたつもりだったロードスターという車を全然理解できてなかった、ということを思い知りました。正直に言うと、いまだに持て余している感はあります。もったいなくて乗れないという貧乏性もよくないですね。
今のところはロードスターを所有しているという事実と、駐めているときの佇まいを見て格好いいなぁ、とニヤニヤしているのが一番嬉しいのです。MT車を所有したのも初めてですから、ダウンシフト時のブリッピングも練習中です。
そんな訳で来年もロードスターとはゆっくりと付き合っていこうと思います。今のところは強烈に欲しい!という他の車もありません。実用車としてはマツダ2で満足していますし、買い替えたい!と先に思うようになるのは、きっとマツダ2の方だと思っています。



