Magene PES P-515 パワーメーターの取付
マキノ号を冬の三本ローラー用マシンとして活用することにしました。
普段、庭の物置に保管していたのですが、ここは真夏に室内がかなり暑くなります。この熱で駆動系を潤滑する油が固着するようで、少しパーツクリーナーを吹いてチェーンを洗浄したぐらいでは油汚れが落ちなくなってました。

室内で使うからには、チェーンラインやチェーンリングに少し触っただけで汚れがつくことは避けたいです。なので、徹底的に洗浄するついでに、これまでマキノ号で使っていたパワーメーターを交換する作業も一緒に行いました。
片側クランクのパワーメーターは過渡期の製品
メインのロードバイクであるCervelo R3には、ROTORの2IN Power DMという左右両側のクランクで計測するパワーメーターを取り付けてます。R3には楕円リングを付けているので、楕円リングのことも計算に入れてパワーを算出するROTOR製品を愛用しています。
昨年の夏に使っていた中古の古いROTORのパワーメータが故障したため、ROTORの本国サイトからチェーンリング付きで12万円ほどで新品を購入しました。このパワーメーターは左右にクランクにセンサーを搭載していて、動作も安定しており、見た目も非常に気に入ってます。

これに対して、マキノ号には左側のクランクだけでパワーを測定するSTAGES社のパワーメーターを取り付けていました。これは輸入代理店のインターテックの公式サイトで、2年前に43,890円で購入しています。

そこから2年の月日が流れて、現在は中国製の安価なパワーメーターの精度が上がり、安価に入手出来るようになりました。全ての用品の値段が上がっているロードバイクの世界において、唯一値段が下がったメジャーアイテムがパワーメーターです。
こういう片側のクランクで計測するタイプのパワーメーターですが、片側のペダルに掛かる値を倍にすることでトータルのパワーを算出しています。こういう片側でだけパワーを測定する製品は、まだパワーメーターが高価だった過渡期の製品だと思っています。
同じような製品としてiiii社の片側クランクのパワーメーターとどちらにするか?で悩みました。しかし、iiii社のパワーメーターはGarminの最新のサイクルコンピューターで認識しない問題が当時ありました。なので、自分はSTAGES社の製品を選択した記憶があります。
実際にSTAGESのパワーメーターを運用してみましたが、安定していて問題を感じることなく使用できました。ちなみにSTAGESの輸入代理店だったインターテックですが、最近、STAGESの製品の取り扱いを終了したようで、在庫品を公式サイトで安価に放出していました。
中国メーカーの安価なパワーメーターの評判が良くなってきたので、それを試してみたいという気持ちがあり、まだSTAGES社のパワーメーターがそれなりの値段で売れるうちに入替することにしました。
パワーメーターにも色々と種類があります
パワーメーターにはペダル型、クランク型、スパイダー型、ホイールハブ型などが存在します。ペダル型とクランク型は左右のひずみセンサーの値を合算してパワーを計算し、スパイダー型、ホイールハブ型はチェーンリングやホイールなど左右の力が合算された場所にセンサーを取り付けてパワーを算出しています。
ホイールハブ型はPowerTapという製品名で、パワーメーターの黎明期に存在した製品でして、これをハブとしたリアホイールを組む必要がありました。出力のもっとも最終段階であるホイールでパワーを計測するため、精度は良かったようです。しかし、ホイールが自由に選べないデメリットが大きく、現在このタイプのパワーメーターは見掛けなくなりました。
自分はペダル型としてGarmin Vector2を固定のスピニング台に取り付けています。ペダル型が一番細かくデータを取ることができるパワーメータでして、ペダルを踏んでいる位置、左右のパワーバランス、トルク効率、ペダリングのスムーズさなどの豊富なデータが計測できます。
Cervelo R3に取り付けているROTOR 2IN Powerはクランク型でして、ペダル型と同様に左右にひずみセンサーが設置されています。なので、左右のパワーバランスも正しく計測できますし、それ以外にもトルク効率、ペダリングのスムーズさが測定できます。ペダル型に次いで、多くのデータが取得出来るのがクランク型です。
スパイダー型になると、スパイダーアームに掛かるひずみを計測するセンサーだけでパワーを算出します。ペダルやクランクのような左右に分かれたセンサーから算出しているわけではないので、左右のパラーバランスなどはクランクの位置から推測した理論値しか出せません。
しかし、スパイダー型はセンサーの数が少なくて済むので安価に作れますし、左右のペダルの力が合算されたスパイダーアーム部で計測するので、片側のセンサーの値を倍にしてパワーを算出するよりも正しいパワーの値が計測できます。なので、最近はスパイダー型のパワーメーター製品が増えてきました。ROTORもクランク型だけでなく、スパイダー型のパワーメーターも販売してます。
左右にセンサーを配置したタイプのパワーメーターは豊富なデータを取得できますが、自分が実際にこれらの値を参考にトレーニングはしていません。パワー値はトレーニングで向上することが実感できるのですが、それ以外の計測値はトレーニングを重ねても値があまり変わらないのです。
高価でも細かいデータを取りたいシリアスな競技者であれば、最近はペダル型の製品の種類が増えましたので、それを選ぶのがベストでしょう。一般のロードバイク乗りでパワーメーターにあまりお金を掛けたくない場合、安価になったスパイダー型が選択肢として有力だと思います。
Magene社のPES P-515を取り付ける
今回はSTAGESの片側パワーメーターを取り外し、スパイダー型のパワーメーターを取り付けます。リプレースする製品は、グロータック社が代理店で輸入しているMagene社のPES P-515です。

自分はYahooショッピングで一番安かったお店で4万円ほどで入手しました。ちゃんとグロータック社扱いの日本代理店版が届きました。今回はチェーンリングは105クランクから外して取り付けます。なので、クランクとパワーメーターがセットになった本体のみを購入しています。

クランクとスパイダー型のパワーメーター本体、充電ケーブル、チェーンリングボルトなど、必要なものは同梱されています。取付に10mmのアーレンキー、ボトムブラケット用工具が必要になります。特に10mmのアーレンキーは通常、自転車の整備には使わないサイズです。

105のチェーンリングを外して綺麗に洗浄し、P-515のクランクとパワーメーター本体のスパイダー部を組み合わせてから、チェーンリングを取り付けます。チェーンリング固定ボルト4本は製品にも付属しますが、自分は105のボルトをそのまま使いました(要トルクスレンチ)
クランクアームやスパイダー部の組合せ位置、チェーンリングの取付位置は、パッケージ写真を参考に取り付けました。ちなみに105クランクとほとんど同じ寸法で作られているのか、クランクをBBに取り付けた後、フロントディレイラーの位置調整は不要でした。
P-515は左クランクの取付が鬼門らしい
magene社の左クランクはシマノのように2本のボルトではなく、1本で固定します。噂によると前モデルのP-505の左側クランクの取付が緩みやすかったようです。P-515の左クランクの取付は前モデルと同じ構造のようで、左クランクの取付手順についての注意事項が説明書に詳細に追記されてました。

締め付け方法がシマノのクランクと異なっており、ボルトが1本しかないことも緩みやすい原因のようです。クランクキャップをシマノの物に交換すると緩みにくいとか、付属のクランクキャップを使うのであれば、緩み止めを塗るべきという意見をネットでは見掛けました。
このクランクキャップを取り付けるのに10mmのアーレンキーを使うのですが、手持ちの10mmの工具がありましたので、これに10mmのメガネレンチを掛けて指定トルクを意識して締めました。
このクランクキャップの締め付け方法を具体的に分かりやすく説明してくれているのが、上記の動画です。製品にはクランクキャップで使うOリングの予備がついてくるのですが、これは締め付け時に変形して、クランクキャップの緩み止めとして機能するようです。今後、クランクキャップを取り外したら、定期的にこのOリングの交換が必要なのでしょう。
マキノ号のチェーンラインとかチェーンリングの洗浄も行ったので、取付の作業時間は2時間半ほどでした。上記の動画であらかじめ締め付け方を理解していたので、作業はスムーズに進みました。製品の加工精度も良くて、作業性は悪くありませんでした。
利用するためにアプリでアクティベーションが必要?
クランクの回転や変速がちゃんと動作することを確認して、パワーメーター本体にマグネットでケーブルを取り付けて充電します。充電を待っている間に、このパワーメーターを設定するためにiPhoneに専用アプリをインストールしておきます。

同梱されたグロータック社が入れた説明書に「このパワーメーターを利用するにあたって、メールアドレスを入れてアプリからアクティベーションが必要」という記載がありました。これまで所有していたパワーメーターで、アクティベーションが必要な製品というのは初めてです。
製品とメールアドレスをアプリで紐付けるというのは、手放す時とかに大丈夫かいな?という不安はあります。紐付けなくてもパワー計測は出来るのでは?とも思ったのですが、ここは素直に説明書に従って、アプリからメールアドレスを入れて認証コードを受け取り、それでパワーメーターのアクティベーションを行いました。
こういう製品にアクティベーションが求められる、というのは個人的には好ましくありません。アプリがないとセットアップ出来ないのも、今後長く使うことを考えるとサポートが不安です。もっともパワーメーターは進化してますし、内蔵電池の劣化を考えると長期間使い続けることは考慮されてないのでしょう。
初期動作は問題はなかったが、左右差は期待しては駄目かも
新潟はあいにくの悪天候が続いていますので、先日導入したグロータック社のGTローラーで動作確認します。Garminのサイクルコンピューターで、パワー値を確認しながら30分ほどトレーニングしました。その後、Garmin Connectでデータを確認します。
以下の確認は、あくまでもローラー台での動作確認です。今後、実走で使って見てレビュー内容が変わる可能性があることはご了承ください。もうすぐ冬なので、このバイクで来春まで屋外を実走しない可能性が高いんですけどね。

30分ほど回してサイコンに表示されるパワー値を、他の自転車に取り付けたパワーメータでの計測値と体感で比較しますが、あまり違和感はありませんでした。自分は3秒平均のパワーをサイコンに表示させていますが、ログで確認してもスパイクのような異常値は見られなく、安定してパワーは計測できているようです。

上記はP-515でローラー台トレーニングをしたときのGarminのログです。スパイダー型は理論的には左右のバランスは計測出来ないのですが、左右のクランクの位置が前に出ている時のパワーから推測して、擬似的にバランスを算出しているそうで、左右バランスとペダルスムースネスの値が表示されていました。
この値の精度がいまのところ怪しいと思っています。パワー値は信頼できそうなんですが、左右の差の値については明らかに揃いすぎています。自分はこんなに綺麗にペダリングは出来ません。

上のデータはCervelo R3で日曜に実走した時に、ROTOR 2IN Powerで計測した値です。自分は左脚の出力が弱く、特に2月に膝を怪我してからはそれが顕著です。なので上記のように40:60ぐらいの左右バランスが実際の状態だと思っています。
それに対してP-515は、左右バランスもペダルスムーズネスもほぼ左右で均等という値が出ています。実走時とローラー台での違いはありますが、やはりスパイダー型に左右差の値は期待してはいけません。それからP-515ではトルク効率は測定できませんでした。
自分の場合、実際にはこれらの左右の差を意識して、左脚を鍛えるとか左脚のペダリングを綺麗に回すように意識するとかいうトレーニングに意味があるとは思えません。精度が高いパワーが安定して測れるのが、自分がパワーメーターに求める第一の性能です。
このあたりの話は、P-515の輸入代理店のグロータック社の以下のBlog記事が詳しく書いてくれてます。導入を検討している方は是非、この記事の前後編共に読むと、パワーメーターの種類と現状について、この記事よりも参考になると思います。
ちなみにVector2では、もっと詳細なペダリングに関する情報がログに残ります。この辺はさすがGarmin純正です。ROTORもパワーメーターとしてはノウハウのあるメーカーなので、信頼しています。ただ、どちらのメーカーの製品も高価ですからね。
約4万という価格で、擬似的にパワー値を算出する片側クランクのパワーメーターから、ちゃんとパワーが計測出来るスパイダー型であるP-515への乗り換えには満足しています。自分の場合、コンポが105だったので、重量的にP-515に変更しても大差はありませんでした。
もっと上位グレードで軽量なクランクを求める方はカーボンクランクの上位モデルを選ぶか、他社製のクランクを組み合わせられるスパイダー部だけのパワーメーターが他のメーカーからも発売されていますので、それらを選ぶのがよいでしょう。
まだ使い始めたばかりなので、耐久性や安定性などの評価は定まっておりません。色々とパーツ類が高くなっている自転車業界において、中国系メーカーだけが価格破壊を起こし、品質も良くなって無視できない存在になっていると感じています。
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