日本サイクリング協会(JCA)という団体があります。2014年までは、この協会に年会費を支払って加入すると自転車の個人賠償保険がついてきたり、JCA主催のイベントに優先的に参加出来たりするという特典がありました。
その中でも大きな特典として、ヤマト便で自転車を安い値段で送ることの出来るサイクリングヤマト便がありました。これは袋に入れた自転車であれば、ヤマト便で60kgサイズとして荷物を送ることが出来るというサービスです。お値段的に他の業者のサービスに比べると割安です。
ヤマト便というのはクロネコヤマトが運営していますが、いわゆるクロネコヤマトの宅急便とは異なるサービスです。宅急便で扱えないような大きい荷物(三辺の合計が160cmを越える)や重量物を送る事が出来て、料金もお得です。ただし、集荷の締切が早かったり到着時間指定が出来なかったりと、宅急便ほどきめ細かいサービスではありません。
通常のヤマト便で自転車を送ろうとすると、荷物は段ボール箱に入れていなければなりません。また自転車の場合には実際の重量には関係なく、100kg超えの料金が取られる場合があります(ドライバーの判断で料金はマチマチな印象)。
サイクルヤマト便の場合には、輪行袋等に入れた自転車をそのまま送ることが出来きて、料金は一律60kg料金となります。ちなみに東京都23区からのヤマト便の料金はこんな感じなんので、例えば新潟までは2,052円で済みます。普通に送って100kgの料金だと2,916円になります。
ちゃんとフレームとかにバラしてロードのフレーム用の段ボール箱に入れて、明らかに軽いと一番安い30kgサイズと見なしてくれる場合もありますが、これは輪行とはちょっと違うので除外。余談ですが、ある程度バラしたロードバイクを保管目的で別の場所に送るのであれば、箱を使うので普通のヤマト便でOKです。
サイクルヤマト便の便利なポイントは料金の安さもそうですが、袋に入れて送る事が確実に出来ることです。Webページなどを検索すると「普通のヤマト便でもOS-500などの輪行袋で送る事が出来た」というレポート、知人で実際にOKだったという事例もあれば、「段ボール箱に入れた物でなければ受けてくれなかった」という声もあります。この辺は営業所の方針なのか、ドライバーの判断なのか曖昧なところです。
ちなみに自分の最寄りの営業所では「ヤマト便で自転車は箱入りじゃなければダメ」でした。サポートセンターに確認してみても「箱入りであること」が必須とのことでした。この営業所やドライバーによって対応がマチマチなのは非常に困ります。
もしも、送る時の営業所が袋OKでも、送り返す時の営業所やドライバーが「袋では送れない」って言い出したらどうします? そのために事前に送り返す先の営業所に電話して確認しなければなりません。もしOKだったとしても、集荷に来る人が同じ判断をするか心配です。そんな訳で「袋に詰めて送ったら、帰りも袋に詰めて送れる」というのは必須条件だと思います。
サイクルヤマト便は通常のヤマト便とは逆で、段ボール箱に入れた自転車は送れません。ちゃんとした段ボール箱に毎回自転車を詰めて送れるのであれば、普通にヤマト便を使えば良いわけです。段ボール箱に入れた自転車をヤマト便で断られるケースはほぼ無いでしょうからね。
さて、前置きが長くなりましたが、もう少し説明が続きます。2014年から、今までJCA会員の種類が増えました。これまでは自転車保険、サイクリングヤマト便を利用出来る権利などがセットで年会費が5000円のJCA賛助会員しかなかったのですが、2014年からCJ+会員というのが増えました。
まずJCA賛助会員から、会費の内訳の大半を占めると思われる保険への加入が別枠になりました。JCAの自転車保険は、自転車保険の選択肢が少なかった頃は掛け金の割に手厚い保証のある保険ですが、今は他の自転車保険の選択肢が増えました。また2014年からブルベに参加する個人の保険が必須になったタイミングで、JCAは「ブルベは保険の対象外」と明確のWebページに掲載するようになりました。
これらの事情からJCA賛助会員には加入したいが保険は要らないという声が出て来たのでしょう。またサイクリングヤマト便のみを利用したいという私みたいな人もそれなりに多かったのかと思います。それらの声に応える形で誕生したのがCJ+会員ではないか?と推測しています。
細かい事はリンクを張ったWebページを見て貰うこととして、サイクリングヤマト便を使うだけであればCJ+のベーシック会員(年額2700円)に加入すればサイクリングヤマト便が利用出来ます。で、このCJ+会員向けのサイクリングヤマト便ですが、JCA会員のサイクリングヤマト便と利用方法が異なります。
それが従来からあるサイクリングタッグを添えて申し込むサイクルヤマト便と、利用するごとに利用料を支払うサイクルヤマト便(電子版)です。詳細はここにまとめられています。
【JCA賛助会員向け サイクルヤマト便(タッグ)】
JCA賛助会員に入会後、2000円を払って事務局から上記のサイクリングタッグを取り寄せます。このタグはJCA賛助会員を継続している間は、タグは何度でも利用出来ます。また毎年タグを購入する必要はないようで、会員である限りはタグは利用し続けられるようです。
もちろんJCA賛助会員を退会したら、このタグは使えなくなります(返却するのかな?)。インチキしようと思っても、利用時にJCA賛助会員の会員証の提示を求められるそうです。JCAの賛助会員は保険がない現在、年会費は4000円です。
後述する電子版では一回の利用で270円かかることから、 年間で往復で4回以上(都合8回)のサイクルヤマト便の利用があるならばJCA賛助会員になるのもよいですね。また電子版では事前にヤマト便の伝票を入手しておく必要がありますが、タッグの場合には集荷に来た人に持ってきて貰って記入することも可能です。
【CJ+会員向け サイクリングヤマト便(電子版)】
CJ+会員はJCA賛助会員と異なり、会員資格を表す会員証は存在しません。全てはオンラインで完結しており、クレジットカードがあればWebページからすぐ会員になることが出来ます。
なので、サイクリングヤマト便の利用もオンラインで申し込むと利用料540円(税込)で2回のサイクリングタグの発行が可能になります。つまり1回当たり270円の利用料でサイクリングヤマト便が利用出来る事になります。
という訳で年間に3~4往復程度の利用しかしないのであれば、このCJ+会員向けの電子版がお得です。年会費の2700円と利用料なんて、袋で自転車を送れるメリットや料金が割安になることから、数回の利用で元が取れるでしょう。
Webページから利用権を購入するのは、クレジットカードがあれば会員に入会するところから利用権の購入までオンラインで全て完結します。なので、思い立ってから数分で済むのもありがたい。
ただし、サイクリングヤマト便(電子版)には以下の注意が必要です。
1) 事前にヤマト便の伝票が必要
利用権を購入したら、電子タグの発行をWebページから行うのですが、その際にヤマト便の伝票に書いてある伝票番号は必要になります。という訳で事前にクロネコヤマトの営業所に寄って伝票を入手しておきましょう。なお、普通の宅急便の伝票とは違うのでコンビニとかには置いていない事が多いです。必ず「ヤマト便」と書かれた緑色の伝票が必要となります。
2) 電子タグを発行したら印刷しておく
Webページで発行されると上の方にある画像のような画面が出ますので、この画面を印刷しておく必要があります。なので、帰りに自宅まで送る必要が有る場合には、必ず事前に帰りの便のヤマト便の伝票を記入しておいて、電子タグを印刷しておいた方が良いです。出先で印刷が出来るとは限りませんから。
電子タグを発行する前に2枚の伝票に行きと帰りの分の記入をしてから、電子タグを発行するのをオススメします。電子タグを発行するときに入力する伝票番号は変更出来ないので、伝票を書きし損じたりすると大変面倒なことなります。そして印刷した電子タグと伝票は汚れないように一緒にしておいて、輪行で使う袋に入れておいた方がよいでしょうね。
さて、伝票の記入と電子タグの発行が終わったら、自転車を梱包しましょう。
サイクルヤマト便は輪行袋で送る事が出来ますが、普通の輪行袋ではフレームやホイールの保護的に少々不安です。なので、定番であるオーストリッチのOS-500という1cmのウレタン保護材が入った袋がオススメです。
OS-500は折り畳むことで、駅や空港の大きめのコインロッカーにも入ります。袋だけであれば、またビニール袋に入れて移動先の郵便局に局留めで送っておく事も出来ます。段ボールの輪行箱ではホテルに預ける以外、保管が出来できないのが意外と困るんですよね。サイクルヤマト便を利用することで袋で自転車が遅れる事には、こういうメリットもあるのです。
OS-500に自転車を詰めてみましょう。まずペダルを外したら、次に前後のホイールを外します。そしてリアディレイラーを外して、緩衝材で包んでフレームにくくりつけておきます。これは移動時にリアディレイラーが動いてチェーンが絡まったりしないようにするためです。
リアディレイラーを外すのは、ディレイラーハンガーに無理な力が掛かって破損するのを防ぐためでもあります。そして念のため、エンド金具を取り付けておきます。
フロントフォーク用の保護用にフロントにもエンド保護材を取り付けておきましょう。普通の輪行では、自分はフロントフォークに保護材は取り付けませんが、送る場合にはやった方がいいでしょうね。
OS-500は小さめの自転車ならよいですが、自分のように560mmのサイズの自転車の場合にはギリギリです。なのでサドルとシートポストは縮めるか抜くかしないとOS-500には収納出来ません。
この写真では縮めてますが、シートポストの化粧面を傷めてしまうので、抜いておく方をオススメしたいですね。
OS-5ooに自転車を入れます。左右にホイールを入れるポケットが付いてますので、ホイールからはクイックリリースは抜いておきましょう。
OS-500は横方向がタイトなので、ペダルを外すのとクイックを抜くのは必須ですね。フレームサイズにも依存すると思いますが、我が家の自転車の場合にはこれらを外さないとOS-500のファスナーが閉まりません。
自転車を中央に入れて、左右のポケットにタイヤを入れます。隙間に着替えやヘルメット、シューズなどを入れて完了です。
帰りは隙間にお土産なんかを詰めて送ったりするのにも便利です。なお、サイクルヤマト便の利用時は関係ないですが、飛行機でOS-500を使う場合、タイヤの空気を抜いておくこと、工具類も一緒に入れておくと良いです。
OS-500には伝票を入れるポケットが付いていますので、そこに帰りの分の印刷した電子タグと記入済みの伝票を入れておくと良いです。
袋に入れたら集荷の依頼でヤマトのサービスセンターに電話しましょう。ネットからの集荷依頼も出来ますが、サイクルヤマト便の場合には電話で事情を話しておいた方がスムーズです。
ヤマト便は宅急便よりも届くまで時間が掛かる場合があります。集荷締切時間も結構早いので、宅急便と同じ感覚で前日とかに集荷だと間に合わない可能性があります。電話ではサイクルヤマト便の利用であることを明確に伝えておきます。サポートセンターから最寄りの営業所に連絡がいくと、営業所から問い合わせの電話が来ますので、集荷時間などはそこでドライバーと会話しましょう。
引き取りに来たら電子タグを見せて、記入済みの伝票を渡します。ここで保険の加入を聞かれますが、必ず入りましょう。30万までは1万円あたり10円となりますが、30万を超えると1万円あたり20円となります。つまり29万円までなら保険は290円ですが、30万になると600円になります。その辺は頭に入れておくとよいです。
なお、自分は一度ホイール破損がありましたが、保険でちゃんと修理代が保証されました。サイクリングヤマト便による破損は少なからず耳にするので、到着したら問題ないかどうかよくチェックして、異常があったら早めにヤマトのサポートセンターに電話した方がいいですね。
あとは料金を支払ったら送付は完了。なおホテルなどの宿の送る場合には、事前に宿に電話して必ず確認をしておきましょう。自分は今のところは大丈夫ですが、たまに引き受けを拒否される場合があるそうです。
写真はホテルにOS-5ooを利用してサイクルヤマト便を使って送ったときです。組み立てたら、OS-500をたたんで駅のロッカーに入れておきます。
昨年は三往復でサイクルヤマト便を利用しましたが、自転車がないと深夜バスなどの安い交通手段が使えます。またジェットスターなどのLCCでは自転車を持ち込むと手荷物料金が取られますし、青春18切符などの頻繁な乗り換えのために自転車があると辛いので、自転車はないと楽ちんですよね。
破損に関して言えば自分で輪行したほうが安全だと思いますが、選択肢の一つとしてサイクルヤマト便はそれなりに便利です。ただ、利用回数が少ないと会員の年会費の元が取れないので、ご利用は計画的にネ。
ちなみに自分はこの11月末で会員の有効期限が切れますが、次に利用するタイミングで再入会しようと思ってます。CJ+会員はオンラインですぐ入会出来ますから、サイクルヤマト便が必要になったタイミングで入会した方が無駄がないと思います。