BB30(BBRight)のカートリッジベアリングの交換

Cerveloは自社のバイクにBBRightというBB30と似たような規格の圧入BBを採用しています。名前の通り、チェーンリング側がある右側に少しオフセットしたBBなのですが、軸受けとかの規格はほぼBB30と一緒でして、クランクのシャフト径も30mmです。

ROTORから発売されているBBがほぼ互換性がありますので、それらのスリーブを圧入してスペーサー類を入れてROTORの30mmシャフトのクランクを愛用しております。で、このBBに使われているベアリングがそろそろ組み付けから2年ほど経過するので、交換するのが今回の作業となります。

まずはスリーブをフレームから取り外す

クランクを取り外してBBの状態を確認します。かなり汚れでドロドロになっています。ベアリングもどちらもゴリゴリと音がする感じで、これは交換しないとダメです。実はこのROTORのBBのスリーブ、2013年ぐらいに購入した中古のCervelo S5に付いていたもので本来はセラミックベアリングが採用されているはずなのですが、普通のスチール鋼のベアリングに交換されていました。この中古のS5ですが、プロチームの練習機材だったのでカートリッジベアリングとか頻繁に交換していたんでしょうね。

という訳でゴリゴリになったベアリングですが、スリーブをフレームに圧入したまま取り外すのは少々難しいようです。フレームに取り付けたままひっぱたく的な作業でベアリングを抜く事はできるでしょうが、フレームが痛みそうなのであまりやりたくありません。というわけで大人しくフレームからスリーブを除去してベアリングを交換して、再度圧入とします。

自分は昔、AliExpressで6000円ぐらいで専用工具を購入しておりまして、それを使うと安全にフレームからスリーブを取り外すことが可能です。具体的にどんな工具か?は取り付けの時の記事を参照してください。

2018 Cervelo R3 Diskの組み立て(eTap HRDの油圧ブレーキ回りを重点的に)

交換用ベアリングの調達

交換用のカートリッジベアリングですが、このROTORのスリーブに合うベアリングは汎用品が使えます。自転車パーツとして売っている専用品に比べると、モノタロウなどのサイトで安価に調達出来ます。

自転車のBBに使うのであれば汚れが入らないように両側接触ゴムシールのカートリッジベアリングを使います。NSKの場合の両側接触ゴムシールの型番はDDU、NTNの場合の型番はLLUになります。これがメーカーで違っていて統一されていないのです。

自分はNSKのベアリングを選びました。ROTORなどシャフト系が30mmのクランクを使う場合、ベアリングも内径30mmのものを使います。自分はモノタロウで 6806DDU という型番のものを注文しました。オーソドックスな単列深溝玉軸受のベアリングで両面接触ゴムシールの物となります。2019年に発注した時が1個599円、2022年8月現在で629円(どちらも税別)となっております。

箱からベアリングを取り出すとこんな感じ。両面接触ゴムシールのものは回転が渋いと言われていますが。防水性能が高くて安価です。自転車のクランクのような低回転なところに使う軸受けとしてであれば、摩擦によるロスは一般ユーザーであれば無視してもよいかと思いますね。

色々なベアリングを試してみたい気持ちはあるのですが、非常に微妙な差であり性能を実感出来ない可能性が高いため、作業の手間を考えると比較とかする気が起きません。ベアリング自体は安価ですから、1年に1回ぐらいは予防的に交換した方がいいでしょうね。シマノのホローテックIIのBBをまるごと交換するよりも部品代は安くあがります。

スリーブから古くなったベアリングを外す

BBのスリーブに圧入してあるベアリングを外します。品物によってはベアリングを抑えるためのスナップリング等がハマっているものもあるようですが、このROTORのBBはそういうものはありませんでした。

外したスリーブに取り付けてあるカートリッジベアリング。回転はゴリゴリになっていて、あとでシールを剥がして分解したら、玉のいくつかが摩耗しておりました。表面をよくチェックしてもスナップリングは見当たりません。

このベアリングは再利用しませんから、スリーブを傷つけないように反対からコツコツとマイナスドライバで叩いて、徐々に外していきます。あせって一気に叩くとスリーブとベアリング外周で傷が入ったりしますので、ここは丁寧に作業しましょう。

ベアリングがある程度外れてきたら、スリーブ外周を覆うような円筒で下からスリーブを支持して、ベアリングがスリーブのツライチからはみ出ることができるようにします。

両側ともベアリングを外しますが、なれれば数分と掛からずベアリングを取り出すことが出来ます。古いベアリングを取り出したら、スリーブは綺麗に洗浄しておきましょう。

新しいベアリングをスリーブに圧入する

新品のベアリングに軽くグリスアップをしたら、スリーブに圧入していきます。流石にここでゴムハンマー等でコンコンと新品ベアリングを叩いても入っていきませんし、斜めに入ったら面倒なことになるので圧入工具を使いましょう。

前述のBB用工具を組合せて、ベアリングをスリーブに圧入するためにどのパーツを組み合わせるのか?を考えます。

ベアリングは直径30mmの圧入用アダプタを治具にして、スリーブをフレームに取り付ける時に使う治具にネジ受けあるので、上の写真の様に組み合わせます。後は上のネジを締めていくと銀色に見えているカートリッジベアリングがスリーブに圧入されていきます。

左右ともベアリングの交換が終わったら、グリスアップをしておきます。あとはこれをフレームに再び圧入すれば作業は終了です。

フレームにBBスリーブを再圧入する

フレームにベアリング交換の終わったスリーブを戻していきます。これも工具を使えば簡単です。

せっかくなんでフレームのBB内部も綺麗に清掃して、グリスアップしたスリーブを上記の様に圧入工具にセットします。あとはネジをグリグリと締めていけば、スリーブがフレームに再圧入されます。自分は3回ほどBBを脱着してますが、そのぐらいでは異音が出たり、嵌合が緩くなったりということはありません。

ただ、プロチームの練習機材だったCervelo S5はスリーブがフレームにスコンと素手で入ってしまうぐらい緩くなっていましたが、それでもクランクを回していて異常を感じることはなかったですね。スリーブにグリスを塗って圧入するのも、このS5のBBスリーブがグリスアップされていたので、それを参考にしています。

という訳で無事にカートリッジベアリングが交換出来ました。手で回してゴリゴリと感じるぐらい劣化していても、クランクを取り付けて回すと自分とかでは正直、回転が鈍いことに気がつきません。ただ、ゴリゴリの状態はやがてもっと酷い状態になる前兆でして、完全にベアリングの鋼球が割れたりすると軸受けとしての機能を果たさなくなります。

工具の入手や作業の頻度を考えると個人でやるのは面倒くさいとは思いますが、部品自体は安くて入手性もよいので自分で交換出来ると嬉しい箇所です。圧入BBは人によっては蛇蝎のごとく嫌われていますが、自分は嫌いではありません。というかCerveloに乗っているうちはスレッドBBの復活とか無理なのでは?と思っています。そういえば2010年モデルのR3はスレッドBBだったけど、それ以降は圧入BBになっちゃってますね。