フルクラムの2-Way Fitと2-Way Fit Readyの違いについて

2018 Fulcrum Racing4 DBを今年購入しました。Web等の記事を参考に、チューブレスタイヤ(TL)が使える2-Way Fitだから、TLで運用するぜ!と思ったのですが、シマノやカンパの2Way Fitのホイールには付属してくるチューブレスタイヤ用のバルブが付いてきません。

以前、カンパのZONDA 2-Way Fitにはバルブはちゃんと付いてきました。カンパとFulcrumは事実上同じメーカーみたいなもんですから、同じようなもんだろうと思っていたのです。結果的には2018のRacing4とか5とかはスペックをよく見てみると2WAY – FIT™ READY (ROAD)と書いてあります。

FulcrumのWebページを見ると、2-WAY FIT™の説明ページが別にありました。どうもこの2つの仕様はホイールそのものの仕様としてはやや異なるもののようです。

2WAY – FIT™ READY (ROAD)の説明ページ
2-WAY FIT™ の説明ページ

この違いについて説明しているWebサイトが少ないので、2WAY – FIT™ READY (ROAD)のRacing4 DBにチューブレスタイヤを適用する手順とともに注意点をまとめておこうと思います。

2WAY – FIT™ READY (ROAD)はデフォルトではTLタイヤは使えません

まず最初に結論を書きますと、2Way-Fit ReadyのホイールであるRacing4 DBは工場出荷状態でTLタイヤを取りつけることが出来ません

2-Way Fitのホイールの場合には、ニップルホイールが完全に塞がれていてTLタイヤを使う上で必要な気密が確保されていて、TL用のバルブが付属するはずなのでそれを使えば工場出荷状態でTLタイヤが使えます。

カンパのZONDAはそうでしたし、MavicのUST対応のホイールもそう、シマノの2-Way Fitもそうです。ちなみにFulcrumの場合には、Racing ZEROの2-Way Fitは工場出荷状態でTLタイヤが使えるホイールです。

しかし、Fulcrumの2-Way Fit ReadyのホイールはTLタイヤをポン付けできません。ご覧の通り普通のリムテープが貼ってありニップルホールがあるタイプのリムが使われています。

そしてTLタイヤ用のバルブが付属しません。極めつけはマニュアルに「このホイールはクリンチャー専用です」っていう記述があるんですよ。

えー、この2-Way Fit Readyって一体何なのよ?と思ったのですが、先ほどの2-Way Fit Readyの説明サイトに、この仕様のホイールでTLタイヤを使うための手順が書いてありました。

その説明書を見ると、工場出荷時のリムテープを剥がして、TL対応のリムテープを張り、チューブレスバルブを取りつけるという手順が書いてあります。そしてシーラントは必須っぽいですね。

TLタイヤを使うホイールには4つのポイントがあります。

  1. ビードがTLに対応した構造になっていること
  2. リムの中心部が凹んでいてTLタイヤのビードを落とせる
  3. リムの外周に気密性がある
  4. チューブレス用のバルブが取りつけられる

普通の2-Way Fitのホイールはこれを全て満たすように作られているのですが、Fulcrumの2 Way Fit Readyは1と2は満たしているものの、3と4は自分で作業&調達してよ、という仕様のようです。

いやー、このことを明確に説明しているWebサイトが殆ど見つからなくて困りました。この2018のRacing4と5は割とリーズナブルながら軽量ということもあり、色々なサイトで紹介されていたのですが「2 Way-Fitだからチューブレスタイヤも使えます」というような適当なレビューがばっかり。

やっぱりレビューとか紹介はちゃんと運用している人のものじゃないと参考にならないですね。

チューブレス対応のリムテープを貼る

それでは実際に2018 Racing4 DBにTL対応のリムテープを貼ってみましょう。前後で作業時間は1時間強かかります。正直、結構面倒くさいです。

先ほど貼ったリンクにFulcrumが公開している作業手順がPDFでダウンロード出来ますのでざっと読んでおきましょう。

まずはリムテープを貼るために作業台として、本来であればぶれ取り台にホイールをセットすると作業しやすいのですが、自分が持っているぶれ取り台はスルーアクスルのホイールが取りつけ出来ないので、今回は自転車の車体を逆さにおいて作業します。

とりあえず工場出荷時のリムテープをマイナスドライバーを突っ込んで、剥がしてしまいましょう。

今回取りつけるのはハッチソンのTLタイヤ FUSION5です。TLタイヤですが、今は色々なメーカーが参入していますが、入手性が良いのはハッチソン、IRCのタイヤでしょうか。

今回はヤフオク!で安く入手したストックがあったので、これを取り付けてみます。ちなみにタイヤはオークションで入手するのが一番安いように思います。買ったけど使わずに死蔵しているタイヤの在庫を持っている人って結構多いみたいです。

今回のチューブレス化に使うもの一式です。PDFファイルにはシュワルベのリムテープなどがよいと記載されてますが、自分はNo Tubesのテープとバルブを使ってTLタイヤを取りつけます。

ディグリーザーはリムテープを綺麗に密着させるためにホイール表面を脱脂するのに必須です。あとはバルブコアを外してシーラントを注入するためのシリンジですが、これはMavicのUSTタイヤに付属した物を使います。

Racing4 DBのリムの場合、No Tubesのテープは21mm幅がピッタリでした。PDFではシュワルベの23mmのテープがしていされてますが、シュワルベのテープは高価ですし23mmはちょっと幅がありすぎて作業しにくいそうです。

ちなみに10ヤード(約9m)のリムテープで約4本のホイール分となります。このリムテープは二重巻きにすることが推奨されてますので、ケチって一重しか巻かないとトラブルの元ですよ。かなりの気圧を受け止めるものですから、ちゃんとNo Tubesの指示に従って巻きましょうね。

ホイールの表面を脱脂し、シールなども2カ所ありましたのでこれも綺麗に剥がして糊が残らないようにしたら、テープを貼っていきます。写真のようにピンと引っ張りつつテープをリムに巻いて、中央のビードを落とすための凹みにピッチリと沿わせるようにテープを押しつけます。

テープ自体が厚手であまり伸縮性がないので、かなりしっかりと力を入れないと凹みに沿うようにテープが貼れません。これを全周に渡って繰り返すのですから、かなり親指が痛くなります。テープ自体のコストがホイール一本当たり500円ほどかかりますし、慣れてないとなかなか面倒な作業です。

二周目も同じように巻いておきます。巻きながら押しつけて密着するのがコツです。一度貼ってから後で押しつけて沿わせるようにすると、テープ自体が余ってしまって張り直す必要が出てきます。

Racing4の中央のビードの凹みは浅めなのでテープ自体は密着させやすいですが、この作業が一番かったるいですね。

貼り終わりました。21mm幅でピッタリでした。No Tubesはこの上だと25mmになるのですが、25mmは多分使えません。

中央のビードを落とす凹みにもピッチリと密着させることが出来ました。

バルブホールを開けてバルブを取りつける

バルブホールがリムテープで塞がっているので、これをカッター等でくり抜きます。そんなに綺麗に空かなくても大丈夫です。

ただ、よく切れるカッターじゃないとなかなかくり抜けません。自分は模型用のデザインナイフで穴を開けています。

ここにNo Tubesのチューブレスバルブを取りつけます。Racing 4はリムハイトがありますが、No Tubesのバルブの中でも入手性のよい44mmのバルブで足ります。これが一本当たり大体1000円しますから、リムテープと合わせて2 Way Fit Readyのホイール前後にTLタイヤを使うには追加で3~4000円のコストが必要になります。

実はこの追加コストと面倒くさい作業が必要になるという事実が書いてあるサイトが皆無なので、この記事を書こうと思ったわけです。

TLタイヤを取りつけてシーラントを入れる

TLタイヤを取りつけますが、真ん中の凹みにちゃんとビードを落とせばタイヤレバーを使わずに簡単にTLタイヤを填めることが出来ました。面倒なので石けん水は塗布せずに、空気を入れてビードを上げてみます。

2本のうち1本は簡単にビードがあがりました。もう一本がフロアポンプではなかなか気密が維持出来ずに空気圧が上がりません。という訳でそれぞれでこの後の作業を少し変えます。

まずどちらにもシーラントを注入します。2 Way-Fit Readyのホイールの場合、シーラントを使う事が前提になっていますで、少々多めに入れましょう。バルブコアを外して、シーラントをシリンジで注入します。

フロアポンプでビードが上がった方がの組み合わせは、普通にフロアポンプで空気を入れたらシーラントが行きわたるようにホイールを回します。8気圧ほど入れてしばし放置します。

フロアポンプでビードが上がらなかった方の組み合わせですが、こちらはシーラントを入れた後にもう一度空気を入れてシーラントの力で気密が維持されるように作業します。空気を入れつつホイールを回したりしてシーラントをいきわるようにします。

これを簡単に終わらせる裏技がCO2ボンベを使う事です。CO2ボンベで一気に空気を入れて、ホイールを揺すってシーラントが行きわたるようにすると作業がすぐに終わります。

空気を入れたらしばし様子見します

無事にビードがあがって気密性が維持出来たら作業は完了…と言いたいところですが、経験上、素人がリムテープを貼った場合にはすぐに乗り出さずに数日、気密状態が維持出来るか?を確認した方がよいです。チューブレスは1週間ぐらい放置するとエアが抜けるのは普通ですが、気密が緩くて1日ぐらいでエアが抜ける場合があるからです。

という訳でTLタイヤを取りつけたホイールは自転車にはまだセットせず、そのまましばらく様子見をします。もしエアが減っていたら、継ぎ足してホイールを揺すってシーラントの効果でエアが抜けている箇所を塞いでくれるのを待ちます。

幸い、この作業を実施して1日経ってもエアは抜けていませんでした。昔、TL対応じゃないWOのリムを同様な手順でチューブレス化したりしてましたが、あれは簡単にエアが抜けてしまうことが多かったですが、やっぱりビードがちゃんとTL用じゃないと気密は維持しにくいと思います。

このホイールをTL対応で販売するってアリなの?

個人的な意見としては見出しの通りでして、こんな面倒くさい作業をしないとTLタイヤが使えないホイールを「チューブレス対応です」って説明をして売っていたら、それは看板に偽り有りだと自分は思います。

前述した通りWOリムのTL化で同じような作業をしていたので慣れていましたし、チューブレスバルブもテープも手持ちがありました。ただ、この作業をTLタイヤに慣れていない人に求めるのは少々しんどいと思います。特にリムテープを貼る作業は面倒です。

シーラントの注入もこぼしてしまうと面倒ですし、ビードがなかなか上がらないと焦ったりして時間もロスするでしょう。このホイールをTL対応って言っていいものかどうか…まぁ、対応してないよりはしてたほうがマシなのでしょうが。

これに比べるとMavicのUSTシステムはよく出来てます。TLタイヤの取りつけの面倒くささが一切ありません。それに比べるとまだまだですね。ZONDAの2-Way Fitなどは普通にTLタイヤが工場出荷状態で取りつけられたので、それと同じようなもんだろうと思っていたのですが、これは完全に誤りでした。

Racing4や5はコストパフォーマンスも良いですし、ディスクブレーキ対応のホイールとしてはなかなか良い選択肢だと思うんですよ。でも、殆どの人はクリンチャーで運用しているんだろうなと思います。

このRacing4にクリンチャータイヤを取りつけて宗谷600は完走しましたが、TLタイヤ化でどれだけ印象が変わるかが楽しみです。