ロード用ディスクブレーキについて考察してみる


昨年の秋にCervelo C5をドイツから購入して、この春に2014年モデルのCervelo R3を手放して2018年モデルのディスクブレーキのCervelo R3に乗り換えました。これで我が家においてある自転車は実家に置いてあるマキノ号を除いては、全てディスクブレーキになりました。

リムブレーキのホイールはマキノ号に取りつけている手組のハブダイナモ付きのものを除けば、全て手放しました。まだ高い値段で売れるウチに処分出来て良かったと思っています。

実際に半年間、ディスクブレーキのロードバイクに乗ってみて、実際に体験して分かったこととか具体的にブレーキとしてどうなのか?という点をまとめている記事が本当に少ない。書いてある事といえば「輪行の手順が増える」とか「雨でも利きがが落ちない」というような当たり前の話ばかり。

という訳で、私の非常に個人的な感想でロードバイクの油圧ディスクブレーキについて語ってみますね。しかも自分はMTBとかの油圧ディスクブレーキの経験はなく、しかも経験が自分で組んだSRAM eTapのHRDのみでの感想になりますので、非常に個人的かつ偏った考察であることはご理解ください

最初の印象は「あれ、思ったより効かない」だった

上のの写真はCervelo R3に取りつけた160mmローターで、現行のアルテグラグレードです。最初に納車された油圧ディスク車であるCervelo C5には140mmのローターが前後とも付いてました。

最初はシマノのコンポが付いてたんですが、一度も乗らないウチに速攻でeTap HRDに自分で組み替えました。今思えば、シマノの油圧ブレーキの利きを確認するために少し乗っておけば良かったと後悔しています。

自分はMTBの油圧ブレーキは未経験だったので、油圧ディスクブレーキは効く!という噂から軽い引きでガツンという制動力を想像していたのですが、最初の印象は「あれれ、こんなもんなの?」という期待外れな感じでした。

ブレーキパッドの当たりが出てないと聞かないという話は耳にしていたのですが、ある程度ブレーキパッドに馴染みが出てきた状態でも、レバー引き始めのガツンとしたブレーキの制動力はリムブレーキ(自分が使って他のは9000系デュラのブレーキ)の方が上じゃないか?と思いました。

ちなみに自分が乗っている自転車の中でレバーの引き始めにガツンとブレーキが効くのは、シマノのVブレーキを取りつけたEscape R3だったりします。こいつはちょっと強めにブレーキを掛けると簡単にタイヤがロックします。

どうも引き始めから強い制動力を発揮するブレーキを「よくブレーキが効く」と自分は考えていました。リムブレーキでもVブレーキも制動力の立ち上がりは油圧ディスクブレーキより上なんですよね。

ディスクブレーキとリムブレーキではブレーキの効き方が異なる

最初の印象がイマイチであったロード用の油圧ブレーキですが、これは最初に乗ったC5の前後のブレーキローターが140mmだったからでは?と最初予想してました。

シマノが提唱したロード用のフラットマウントの油圧ブレーキは160mmと140mmのローターが取りつけられます。eTap HRDもセットには160mmのローターが2枚入っていました。

という訳で前後ともローター径を一度160mmにアップしてみました。全体的なブレーキの利きは良くなりましたが、レバー引き始めの制動力はあんまり変わりません。

上の写真はフロントブレーキのアップです。ディスクブレーキのパッドが挟んでいる真ん中にローターが見えると思いますが、本当にクリアランスがギリギリです。

結局、現在はリアのブレーキは140mmに交換しています。フロントは160mm、リアは140mmという状態になってます。

油圧のディスクブレーキは本質的にはリムブレーキと動作原理が違うので、ブレーキ自体の効き方が異なるようです。リムブレーキはホイールの外周であるリムを挟み込んでブレーキを掛けるので、ブレーキレバーを引き始めてブレーキシューがリムに接触したタイミングでガツっとブレーキが効きます。

ディスクブレーキはホイールの外周ではなく、ハブ軸を中心としたブレーキローターをパッドで押さえているので、ホイールの外周部を押さえるリムブレーキの方が小さい力で大きな制動力が発揮出来るはずです。

リアのブレーキのアップです。こっちもクリアランスはギリギリでございます。左右から油圧でピストンがブレーキパッドをローターに押し当てて制動力を発揮するのが油圧ディスクブレーキです。

ロード用の油圧ブレーキはMTBなどの油圧ブレーキに比べると小さいです。MTBのブレーキに対して、ロード用の油圧ブレーキはMTB程のブレーキ性能は要求されないということでデチューンされているようです。MTBの油圧ディスクブレーキは絶対的な制動力はロード用のそれよりもきっと高いのでしょう。

ケーブルでキャリパーブレーキを引っ張ってリムを挟み付ける力と、油圧のシリンダーがブレーキパッドを押してローターを挟み付ける力では、原理的には後者の方が遙かに強い力が発揮出来るはずです。

油圧ディスクブレーキはレバーを握ってた量にリニアに制動力がアップするようです。リムブレーキは初期の制動力は高いのですが、レバーを引いても制動力はリニアにアップせずに、レバーを引き切った状態での制動力がディスクブレーキに劣るのだ、というのが段々と分かってきました。

リムブレーキとディスクブレーキの根本的な違いとは

ここからは私独自の考察なので、デタラメの可能性があることをご理解ください。

高校の物理で動摩擦係数と静止摩擦係数について学んだ方は、動摩擦係数が速度と関係なく一定であるという法則を憶えているかと思います。つまる動いている物に対しての摩擦の力は、その2つの物体が接している面の移動速度には関係しないという事なのですが、現実に適用するとなるとちょっと異なります。経験的には、2つの接している面の移動速度が速いと、摩擦力は落ちるということです。

これは2つの面が接して、その表面の凹凸が噛み合うことで摩擦力を発揮しているのですが、この面が高速で移動していると凹凸が噛み合うことなく凸面のみが接するために摩擦力が落ちるということになります。

それからブレーキを掛ける作用点として、外周部に作用するリムブレーキ、内周部を作用するリムブレーキのどちらが少ない力で自転車が蓄えている運動エネルギーを減らす事が出来るでしょうか?

これは感覚的に分かると思いますが、外周部を掴んだほうが小さな力で運動エネルギーを減らす働きが出来るはずです。むしろ内周部に力を加える場合、より大きな力を掛けないといけません。なので、ディスクローターは大きい方が、少しでも外周部に近い所で制動力を発揮できるのでブレーキの効きは良くなったと感じるんだと思います。

つまり制動力を働かせる作用点は、外周部であるリムに力を加えるキャリパーブレーキの方ということになります。しかし、外周部は摩擦面が接する速度が高く、摩擦力による制動力が発揮出来にくいといえます。逆にディスクブレーキは内周部に力を加える必要があるため、より高いトルクで車輪を止める方向の力を加える必要があります。ただし、摩擦面の速度は外周部よりも低いため、安定した摩擦力を発揮出来るといえるでしょう。

この考察は「リムブレーキは制動力が一定では無くコントロール性で劣る」という説明になるかと思います。高速に接する摩擦面の摩擦係数の変化が激しく、それが雨などのコンディションではより顕著に摩擦力の低下に繋がっているのだと自分は考えています。




それに対して「ディスクブレーキはリニアにブレーキが効いて、雨などの影響を受けにくい」と言われています。油圧によるブレーキパッドを押しつける力はリムブレーキのケーブル引きとは比べものにならないぐらい高い力(トルク)を加える事が出来るのでしょう。更にディスクブレーキは構造的にパッドの損耗によるトルクの変化があまりありません。またロータとパッドの摩擦面の速度がリムよりも低いため、安定して摩擦力を発揮出来るのだと考えています。

ここまで私の独自考察によるトンデモ理論ですので、本気にしないように…

実際に乗った時の体験から分かること

実際に長い下り坂などが続くと油圧ブレーキの方が手が疲れません。何度も説明していますが、これは油圧ディスクブレーキの方がバーを引いた量に対してリニアに制動力が発生して、コントロール性が高いこと、レバーを引いた時の絶対的な制動力の高さが理由でしょう。

リムブレーキはレバーの引き始めでガツっとブレーキが効くのですが、レバーを引き切って最大のブレーキ力を発揮させるために非常に握力が必要になります。私のような過体重の人間は10%の斜度の下りなんかになると、リムブレーキだと相当な握力でブレーキレバーを握り続ける必要があります。ちょっとレバーを引く力を抜くと制動力が一気に落ちるので、下り坂では気合いを入れてレバーを握り続ける事になります。これがリムブレーキで手が疲れる理由です。

油圧ディスクブレーキはレバーを目一杯引いて最大の制動力を維持する為に必要な握力がリムブレーキよりも少なくて済みます。ちょっと力を抜いてもリムブレーキのように一気に制動力が落ちることがありません。この辺がコントロールのしやすさが、長い下りなんかが続く場合の油圧ディスクブレーキの優位点ですね。ブレーキの制動力とレバーの引きに感覚的に一致しているんです。

リムブレーキの自転車ばかりに乗っている時には、こういうものだな、ということで違和感は感じなかったんです。ただし油圧ディスクブレーキに慣れてしまうと、リムブレーキの制動力はやや不自然に感じるようになりました。という訳で、この辺の感覚の違いに戸惑うので機材を油圧ディスクに統一したのです。

エグザリッドリムのブレーキの感覚に似ている

自分はリムブレーキではMavicのエグザリッド加工のホイールを使っていまして、これは雨でもブレーキがちゃんと効くんですよね。ヤスリの目のようになったリムなので、初期当たりのガツンという利きは鏡面のピカピカのリムに劣りますが、レバーを握り込むとぐーっとブレーキが効く感じがしました。

今考えてみると、このエグザリッドのリムのブレーキの感覚である「レバー引き始めのガツンという利きはノーマルリムに劣るけど、レバーを引くと制動力が上がる」という感覚は油圧ディスクのブレーキフィーリングによく似てます。これはギザギザに加工されたリムの表面が、2つの摩擦面が高速で接する事で摩擦力が落ちるのを最低限に抑えているのでしょう。

ちなみにエグザリッドのリムのブレーキは鏡面のリムのブレーキに比べると、初期のガツっとしたブレーキの利きでは劣ります。この辺もエグザリッドの感覚がディスクブレーキに近い理由です。

上の写真はリアブレーキとローターのクリアランスですが、本当に隙間が少ないです。ブレーキシューとローターを接触させるトルクが強力であるということの証しでしょう。

油圧ブレーキのクリアランスについて

リムブレーキもブレーキレバーの引きしろを短めにとって、クリアランスは少なくしておいた方がブレーキがカチッした印象を受けるため、なんかよく効くブレーキだな、と最初思います。これはブレーキシューが減ってきてもちゃんとブレーキがきくように、クリアランスをギリギリに設定するお店が多いことも理由の一つでしょう。

油圧ディスクは構造的にパッドが減ってきても、それを一定の位置に保つような原理があります。なので、ブレーキのクリアランスの調整は最初に合わせてしまえば、後はシューが少し減っても一定のフィーリングを維持出来ます。

eTap HRDではレバーの上部にブレーキのクリアランスを調整するためのネジがあります。これでブレーキの引きしろを調整出来るのです。

自分はこのレバーの引きしろはあまり大きく設定してません。上の写真のレバーの引きで十分な制動力を発揮するように設定しています。

次にブレーキを引いたときブレーキパッドってどのくらい動くのか?を2枚の写真で撮影してみました。上がブレーキしてない状態で、下がブレーキを掛けている状態です。

下の写真の方が、パッドの位置が狭くなっている事が分かるかと思います。たったこれだけの動作範囲でブレーキの利きをリニアにコントロール出来るのが油圧の凄いところです。

ケーブル引きで、こんな微妙な量の動作を制御しようとしたらレバーの引きしろはごく僅かな物になってしまいます。ディスクブレーキにするならメカディスクではなくて、油圧にしましょうというのはこの辺の動作原理も関係していると思います。

もう2枚、ディスクローターとパッドの当たりについて撮影した写真を2枚載せておきます。上がブレーキ掛けてない状態で、下が掛けている状態です。上の写真に極僅かなローターとブレーキパッドの間の隙間が見えると思います。逆に言うとこのくらいしかクリアランスの余裕はありません。

この極僅かな量のブレーキパッドの稼働を油圧で制御しているのです。ブレーキレバーをギュっと握ったときに凄いトルクで内周からホイールの回転を抑えようとブレーキパッドをローターに押しつけているわけですね。

よく効くブレーキとはなんぞや、を理解しておこう

ここまで述べたように動作原理的にはリムブレーキが優れているところもあります。ただ、絶対的な制動力及びコントロール性、摩擦係数が低下する雨での利用ではリムブレーキは油圧ディスクブレーキにトータルでは敵わないと自分は考えています。

レバーの引き始めにガッツリと制動力を発揮してくれるのがよいブレーキではありません。最終的に少ない握力で高い制動力を維持出来て、それがコントロールしやすいのがよいブレーキです。絶対的な制動力ではVブレーキはとても優秀なブレーキではありますが、ちょっと強めにブレーキを掛けるとあっと言う間にタイヤがロックしてヒヤっとすることがたまにあります。

という訳で自分は試乗などで少し油圧ディスクブレーキを試しても、その真価にはなかなか気がつかないと予想しています。リムブレーキとは効き方が違うんだ!というのが理解出来てからが、本当の油圧ディスクブレーキの使いこなしなのだと思います。

かなりの長文ですし、掲載している写真も私のトンデモ理論と直接関係しないものが多いです。このエントリーは与太話だと思って読み流してください…

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